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本当の私たち

私は28才のレズビアンです。今女性のパートナーと一緒に暮らしています。お互いの両親、姉妹、祖父母等にカミングアウトをしています。毎日仕事に行き、帰ってきたら二人で夕食を食べる、そんな異性愛者のカップルと変わらない、平凡な暮らしを送っています。

ただ、今日は、二人の会話は一人のレズビアンの友人の話題でした。 午前中、私のパートナーは昨年亡くなったレズビアンの友人のお宅におじゃましていたのです。

私は彼女に会った事は、ありません。 私が知っているのは、パートナーと友人だったって事。 享年28才であった事。 そして完全なクローゼットだったって事。

彼女の家族や仲のいい友人ですら、彼女がレズビアンであったことは知らないのです。 知っているのはレズビアンの友人たちだけ。

今日も彼女のお母さんとヘテロの友人たちは 「あのこはどこに毎週でかけていたんだろうね? 誰と何をしていたんだろうね?」という会話をしていたそうです。 私のパートナーは故人を尊重して口をつぐみ、自分が何つながりの友人か 一切しゃべらなかったそうです。

私は、HIVを取り上げた番組の中で、HIV感染を公表し活動されているゲイの方の言葉を思い出しました。 「もし、僕が何も言わず死んでしまったら、違う病名、違うセクシャリティ、違うアイデンティティをつけられて死ぬのが嫌で全部公表して活動を始めたんです…..」

セクシャルマイノリティである私たちは したい、したくないに関わらず ヘテロの人より色んな意味でカミングアウトを迫られる機会が多いです。 でもカミングアウトが絶対、正しいとは言い切れない。

色んな状況、立場、状態があって カミングアウトによる痛みは、生半可なものではないから。 失うものもあるかもしれない。

でも私は、会った事もない彼女を思い出す時、 いつも苦しく、泣きたくなる。 私が望むのは、私の大好きなセクシャルマイノリティの友人たちには 一緒に前向きに笑っていて欲しい。

一時的な苦しみは一緒に乗り越えたらいいんだから。 ひとりじゃない。

毎年、この時期は彼女を思い出すでしょう。 いつか私とパートナーがあなたの所に行く時が来たら「日本の同性愛者は差別されず、自由に生きているよ」と報告したい。

ご冥福をお祈りします。

あき