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娘からのカミングアウト

学生時代の終わり頃だったかと思う。ファミレスで娘と二人の楽しいお茶のひととき。家を離れて学生生活を送る娘とは時々出会って話をしている。

「好きな人ができてん。」満面の笑みをたたえた私に「女の人やねん。」天国から地獄へという感じがこれかもしれない。混乱状態の中での娘の一言。「お母さんの育て方が悪かったのと違うから、それだけは覚えておいて。」これが娘からのカミングアウト。カミングアウトという言葉さえ知らなかった私は、その後娘の本が出版されるまで「忘れておこう、聞かなかったことにしよう」の数年間が続いた。異性愛が正常。そしてその人生一直線を歩んできた私にとって、次に何か言い出されるその時がこわかった。

府議挑戦、当選。そして運命の日が去年(H17年)8月の初め。家族4人揃った席で、「本を出す。見本本もできている。一週間後に店頭に並ぶ。」内心恐れていた日がやってきた。マスコミに取り上げられる。その母として私は生きていけるのか。渦が心と頭の中をかけめぐった。その時の息子の一言が、私の気持ちを落ち着かせた。30年間、喘息とアトピーに苦しんできた息子が言った。「僕はかな子を応援する。病気の苦しさよりも、それを見つめる世間の目のほうが僕には冷たかった。少数者に世間は冷たい。かな子のやることが法にふれない限り、それを応援するのが家族と違うんか。」

7月の映画祭。おそるおそる参加。受付に座っていた娘の笑顔。あんな落ち着いた優しい笑顔は殆んど見たことがなかった。「かな子は仲間といることが落ち着くんだ。」

8月。ゲイパレード(東京)でカミングアウトを皆の前ですると聞く。その様子を見てみたいので、行こうと決心する。

少しずつ勉強し、娘のやろうとしていることを応援しようと思い、私も世の中に宣言!のつもりで朝日新聞の声欄に投稿。年末になっていた。

そして今、親の会の発足に関わっている。

尾辻 孝子(兵庫)