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なぜ我が子が同性愛者に?

これは多くの同性愛者の子どもを持つ親が抱える疑問の一つです。その理由はさまざまですが、例をあげるとそれは自分が抱いていた我が子という理想像が崩れることの悲しみからくる疑問であったり、育ててきた過程において自分が何かを間違えてしまったのではないかという思いからであったりもします。我が子の周りにいる何者かが我が子を同性愛の道へ引き込んだのではないか?と疑う事もあるでしょうし、中には生物学的に何かしらの理由を求める場合もあります。

初めて我が子が同性愛者であるという事実に直面したとき、ショック、否定や怒りなどをあらわにする親たちもいます。一つの例としては「何てことをしてくれたんだ!」という思いです。これらは当然冷静な反応であるとはいえませんが、人間というものはショックに対して往々にこういった反応を示してしまうものです。私達はこの反応を嘆きの過程であると考えます。この段階において親は自らの持っていた我が子の理想像が崩れ去る事を嘆いているのです。ですが、この思いとしばらく対峙する事によって見えてくるのは、我が子がした事、それはただ純粋に親を信じ、自分自身を親に知ってもらおうという行動であったのだということです。

他の誰かが我が子を同性愛の道へ引き込んだのだと思う親もあるかもしれませんし、同性愛者が異性愛者を同性愛へ誘い込むというのはよくある誤解ですが、決して誰かがあなたの子どもを同性愛者に仕立て上げたわけではなく、それは彼ら自身が一番良く分っているでしょう。誰も誰かを同性愛者に変えるなどという事は出来ないのです。

中には自分達のしつけに問題があった為、子どもが同性愛者となってしまったと思う親もあるでしょう。心理学や精神医学の分野では親の性格が子どもの同性愛指向の原因である場合があるいう理論がとなえられていた事もありました。支配的な女性や、権威の薄い男性、同性のロールモデルの不在がその原因であるなどといったものです。しかし、こういった仮説はどれも現代の心理学、精神医学の分野では認められておらず、一般社会からこういった神話や誤解を拭い去る事というのも我々PFLAGの主な活動の一部なのです。

同性愛者は特別な家庭環境で育ったからそうなるものではありません。中には支配的な母親の下に育った子どももあるでしょうし、逆に支配的な父親の下で育った場合もあります。ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの人達はいずれの場合も一人っ子である場合、末っ子である場合、真中の子である場合、また長男、長女である場合とさまざまです。家族の中に同性愛者がいる場合もあるでしょうし、全くいない場合もあります。その多くは世間でいう「一般家庭」の出身者達なのです。

遺伝的、生物学的な何かが原因で同性愛者となると考える親もいます。同性愛と遺伝学に関する研究もなされてはいますが、同性愛の「原因」について決定的な発見はいまだありません。きちんとしたデータはありません。しかしなぜその原因を知る事がそんなに重要であるのかということをまずは自分に尋ねてみませんか。

原因の追求や解明が親の子に対する愛を左右するものなのでしょうか。異性愛者達にも同性愛者と同様にその指向の正当性が求められるのでしょうか。ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの人たちはあらゆる宗教、国籍、人種的背景をもっているのです。つまり全ての同性愛者は異性愛者と何ら変わりはないという事であり、性というのは多様なものであるのです。興味深いことではあるかもしれませんが、あなたが子どもを愛すのになぜ同性愛者であるかの理由を知るのは実のところそう重要な問題ではないのです。