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家族の反応

性別不合行動や性別越境自認の子どもに対して、親の反応は様々ですが、いくつかの要因が認められます。

子どもが性別越境自認を隠していれば、多分、親は子どもの内的葛藤を知らないでしょう。性別不合行動や、外見でそれとわかる性別越境自認の子どもなら、親は子どもを支える側に回るか、反対に、生物学的性別に見合う性別基準に従うよう言い張るか、どちらかでしょう。

否定的な反応をする親の場合、確かに其々の文化的、宗教的背景が原因かもしれませんが、同時に、単に経験や、適切な情報が欠けていたというのも、隠れた大きな要因なのです。大抵の親は、当初は失望してそれを態度に表しますが、やがて子どもを理解し、これまでの厳しい批判を止めて、より良い子育てをしようと努力します。子どもの性自認を受け入れた親は、子どもにとって最高の(時にはたったひとりの)支援者になるのです。

異性装をする十代のMtFトランス女性は、普通は秘密にして、家族や友人に言いません。多くは成人後も異性装を隠していますが、トランス支援団体に助けを求めることもあります。家族に打ち明けたトランスは、愛情深い肯定から完全な拒絶まで、様々な反応を経験します。

十代のFtMトランス男性は、異性装を、女らしく成長するのを頑なに拒む一過性の「お転婆」に見せかけることもあります。このケースではいずれ家族内で騒動が持ち上がるでしょう。子どもが「ジェンダー移行」を決心しているなら、家族全員、いずれ大きな変化を目撃します。ゲイの息子やレズビアンの娘は普通、性的指向をカムアウトするかしないか選べますが、ジェンダー移行期にあるトランスの子どもは、この選択の余地がありません。性表現が誰の目にも明らかだからです。

更に、ジェンダー移行期に伴う変化は、親にとって、当事者の外見の変化よりもっと深刻です。言ってみれば、トランスの子どもが家族にカムアウトする時は、親は「娘を失い」、思ってもみなかった「息子を新たに迎える」のです。

あるいは、「息子を失い」「新しい娘を得る」といった感じです。どちらの場合も、自分の子であることに変わりはないのですが。また、カミングアウト後の多くの子どもは前より幸福そうに見えても、新しい問題が次々と積み重なることは確実です。 いったいこれからどんな変化が起きるのか。心を落ち着けるために、ある母親は、新しく息子となった子どもを、以前の娘の双子の兄(または弟)だと思うことにして納得したそうです。

子どもの性自認を認めて肯定する親は確実に増えつつあり、家庭では良き相談相手として、学校では、トランスについて積極的に教師や生徒を啓蒙しています。 問題は、多くのトランスの子どもが、これ以上黙っていられないという時まで秘密にしているために、カムアウトした時、親に激しいショックを与えることです。

父親も母親も、最初の衝撃が過ぎると、否定、怒り、悲嘆、見当違いの罪悪感に襲われ、恥辱を噛みしめます。そして当然ながら、子どもの安全、健康、外科手術、就職、将来子どもが伴侶を見つけられるかなど、現実的な心配も尽きません。

その上、子どもを新しい名前で呼ばなければならない。更にややこしいことに(英語の場合)、子どもを指す度に「彼」「彼女」など、今までと違う代名詞を使う必要があります。

トランスの親に手厚い支援が必要なのは明らかでしょう。家族は、的確な情報と支援さえ得られれば、本当の自分を発見した人間として子どもを誇りに思い、全ての人から愛され、認められて当然だと確信できるようになります。