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ジョンがくれた最高の贈り物

1982年5月、ジェインは初めてみんなの前で、昔の辛い経験について話しました。PFLAGの第一回年次総会の席です。

「今、私は不安で無防備で孤独です。想像してみて下さい。貴方の夫か妻、息子か娘がゲイだと知った時、あるいは、勇気を振り絞ってゲイだとカミングアウトしたのに、相手の目が恐怖で凍りつくのを見た時、または、生まれて初めて公の場でゲイの権利について話す時を。今の私と同じように、ひとりぽっちで怖くて不安でしょう。

でも、みんなに真実を伝えようと覚悟を決めて恐怖に立ち向かうと、体の奥底から力が湧いて来ます。こうすべきだとか、こうあるべきだという、今まで自分を縛って来た鎖から解放されて自由を感じるのです。

結婚して7年目に夫からゲイだと告げられ、その時は人生がひっくり返った思いでした。想像もできなかったのです。何しろ30年間信じていたことが全部覆ったのですから。これが本当で、今まで信じていたことが嘘だったら、何が嘘で何が本当なのか・・・わからなくなりました」。

ジェイン夫妻は、夫の愛人を加えた3人の結婚生活を試してみました。男二人と女一人。誰にも言わず、世間の目を避けて暮らす毎日。セラピーに通ってみましたが、罪悪感ばかり募って自分に何も価値はない、苦しさを訴える権利はないと落ち込みました。

そのうちに妊娠がわかり、ジェインの絶望は更に深まりました。流産に終わった後、ようやく医師に現状を話し、先行きの不安を打ち明けたところ、その医師が「あなたに何の罪もない」と言ってくれたのです。初めて希望の光を見た思いで、とても勇気づけられ、妹や疎遠だった母親にも話してみました。すると二人とも、ジェインの状況を理解して離婚手続きを手伝ってくれたのです。

「母も妹も愛情で支えてくれました。家族が傍にいてくれる、ひとりで頑張らなくていい、という安心感がどんなに私を力づけたことか」。

まもなくジェインは他の町へ移り、自分に合ったセラピーのグループに入り、そこで温かく支援してくれる人々に出会いました。傷ついた心が癒されると、再び生きる気力が湧いて来て、前夫とも少しずつ新しい友人関係を築き始めました。牧師になったジェインは再婚して、二人の子どもの継母です。前夫との強い信頼関係は今も続いています。

ジェインは言いました。「ジョンはあの夜、勇気を振り絞って、『マーティンを愛している』と告げてくれました。ジョンの決断のおかげで、何が真実なのか見極めることができたのです。本当のことを伝えてくれたジョンの勇気は、私への最高の贈り物だと思っています」。

ジェインがこの話をした1982年のPFLAG年次総会では、ほとんどの会員にとって、異性愛配偶者の体験談を聞くのは初めてでした。あれから数十年、最近は特にカミングアウトするLGBT既婚者が増えています。その結果、助けを求める異性愛配偶者も多くなっています。