NPO法人LGBTの家族と友人をつなぐ会のトップページへ戻る

崩れる主体性と信念

「親友は話に乗ってくれないし、同僚の女性は助けになりませんでした。ゲイと結婚した異性愛者についての本はどこにもなかったのです」トレイシー:夫がバイセクシャル

直面する問題が次から次へと増えて、異性愛配偶者は次第に追い詰められ、ついには自分が何なのか、信じられるものは何なのかという究極の問題に突き当たります。

長い間当然と思っていた価値観、つまり結婚や、同性愛や性自認に対する考えを根本から疑うようになるかも知れません。連れ合いがトランスセクシュアルである場合は、結婚時は男性(あるいは女性)だと思っていた相手が、別の性になるわけで、これまでの結婚生活との断絶を意味します。顔や体や名前が変わり、転換前の自分のことを、他人事のように三人称で語る連れ合いと暮らす生活――異性愛配偶者にとって混乱以外のなにものでもありません。

異性愛配偶者は、以上のような問題を解決したくても、支援組織はほぼ皆無でした。LGBTである連れ合いや、家族、友人、専門家に助けを求めても、悩みをわかってもらえません。その結果、ひとりで自分を責め苛む、出口のない迷路に入り込んでしまいます。自分は駄目な人間だ、どこに行ったら助けてもらえるのか、探してもみつからなかったらという不安。孤独は、怒りと恐怖と疑いを倍増し、主体性と信念がぐらつきます。絶望の淵で自問するのは:「私はいったい何者なのだろう。何を信じたら良いのか?」