私の歩んできた当事者としての人生はたかだか10年弱ですが、かなり特殊なものだと自覚しています。
大した葛藤もなく、すんなり自分の性指向を受け入れられた中学時代。それを周囲に発信しようとしてきた高校時代。多くの仲間に出会い、自らを見つめなおし、更なる発信を続けている今。
この人生を拓き、歩んでいるのは自分です。でも、私だけの力ではありません。大学に入り、世界が広くなって初めて気付きました。私には、とんでもなく恵まれた環境があった。家族、友人、パートナー……私に関わってくれた全ての人が、私に力をくれました。中でも両親には感謝しています。
私がすんなり自分を受け入れ、マイノリティであることをあっけなく乗り越えられたのは、ひとえに育った環境のおかげだと思っています。
親へのカミングアウトは、当事者にとって重大な問題だといいます。でも、私は何も怖くなかった。そして期待通りに、両親はさらりと受け止めてくれました。そしてそんな両親が教育者であることを、私は誇りに思います。
クラスに1人は当事者がいるかも知れない、それをきちんと認識して対応できる教師が、果たして何人いるでしょうか。自分の学生時代を振り返ると、それほど葛藤がなかった私でも、教科書の一文や級友の態度に、傷つくこともありました。
けれど教師の一言は、それを救う光になり得ます。私は、自分の享受してきた環境に恩返ししたくて、その環境をもっと多くの人に広げたくて、顔や名前を出して活動しています。恵まれた環境は、もともとそこにあったのではなく、1人1人によって作られたものだと思うからです。親や教育者の立場ではなくても、周りに当事者がいないように見えても。
あなたも「環境」を作っている1人だということを、忘れないでください。人と関わることは、その人の人生を左右することもできるということです。
ぴやまあおい 学生