ご支援/会員募集 SUPPORT お問合せ CONTACT
メッセージ MESSAGE
MESSAGE
COLUMN
ノンバイナリー協奏曲~「もう息子とは呼ばないで」と告白された私の800日(アミア・ミラー著) を読んで 2025.8.21 UP

私はノンバイナリーの子どものいる親なので、今更あえて読まなくても・・と放っておいた本なのだが、ひょんなことで手元に来たので読むことにした。

 

これはアメリカ人の親子のカミングアウト攻防記。アメリカ人も日本人も同じ人間なので感情の揺れ動きに大差はない。読み始めて、自分にも思い当たることが次つぎと書かれていて、「そうそう!」と苦笑い。当時、日本ではノンバイナリーという言葉はなく、Ⅹジェンダーという概念でのカムだった。しかも、この本と同じく2度目のカミングアウト。しかも最初は同じくバイセクシュアルから始まるという・・あらためて思うのは、当人は割り当てられた性別があまりに自分にそぐわないものだから、自分のジェンダーをあれやこれやと探し求め、逆の性別で生活するのだが、それでも違和感はぬぐえず、ようやくこれかなという感覚にいきつく、それが男女の枠に嵌らないジェンダー。

私も子どもに「何故?」と問いかけた。当人は揺れた理由を言うのだけれど、私には到底理解できない。それを別のトランスジェンダー氏は「親と子どもでは文脈が違うから」と言ったけれど、私のような、長年男女二元論、異性愛前提で生きてきた人間と新世代のジェンダー感覚は異なるからなのか、だから一つの体験に基づく感じ方が異なり、それに伴ってジェンダー的な感覚も違い、思考経路も違うってことなんだろうか。で、到底私には理解できなかった。

作者も理解できなくて煩悶する。何冊も関連書を読んで、試行錯誤して、子どもに問いかけても理解できず葛藤し続ける。そこが私とは違った。

私の子どももあまりにも強く、自己主張の塊のような人だったので、自分には理解しがたい子どもとの日常の中で、わからないけど見守っていく生活をし続けるしかなかった。多分、育てているうちに、我が子と言えども人はそれぞれ違うということを思い知らされて来てしまったのだろう。だから、カミングアウトも理解できないけれど受け入れてしまった、だって私の子どもなんだし、そもそもLGBTQ+支援してるわけだし。

 

それにしても、アメリカ人の自己主張は激しい。うちの子どもの比ではない。多様性意識のない親の場合は決裂するしかないだろう、その場合の子どもはどうなるのか、自殺念慮、家出、薬・アルコール依存・・アメリカの深い闇が窺い知れる。

 

ノンバイナリーの子どもの親同士というわけでもないが、作者に共感するのは、親の思いも尊重しようよということ。セクシュアリティで悩み生きづらさを感じているLGBTQ+当人のカミングアウトを受け止め尊重しなければならないのは当然のことだが、セクシュアリティもジェンダーもわかってない、もしくは真剣に考えたこともない親世代にとって、カミングアウトを受け入れるのは難しいというのも事実なのだ。だから知識を得て、理解を深めてほしいところだが、長年、男女二元論、異性愛を当たり前として生きてきた身にとっては至難の業。今まで自分が思い描いてきた子どもとは違うという衝撃、否認、故の抑うつ、葛藤を経て、学び、理解からのコミュニケーションには時間がかかるのだ。作者のように800日以上!だから、親にもAllyが必要で、慰め、励まし合いながら、少しづつ子どもを受け入れていくしかないと思う。

 

本書にも書かれているように、ノンバイナリー、或いはXジェンダーの定義は一人一人違う。そもそも人間はひとりとして同じ人はいないように、ジェンダーはその人間の生き方を顕しているものなので千差万別と言えるだろう。要は、私は私でしかない、他人に生き方を決められるわけにはいかないという意思表示とも言える。旧世代は世間に生き方を求められそれに応じてきたけれど、自分を社会の枠組みにはめたくないという意思表示をする若者たちが増えてきたということかもしれない。対する大人たちは、個人の意思に耳を傾け、対話しながらお互いを尊重し合える、そのような社会になればいいのだが・・・。

 

カミングアウトを受け入れた家族こそ、そのことがわかっていると信じたい。       M

 

 

 

 

ご支援と会員募集 SUPPORT

私たちの活動を応援してくださる人々の参加を歓迎しております。「LGBT の家族と友人をつなぐ会」の会員となって私たちの活動を支えていただければ幸いです。

事務局からのお知らせ INFORMATION
お問合せ CONTACT

フォームよりお気軽にお問合せください。

お問合せは各拠点へお願いいたします。(@を半角の@に変えてください)