「あんたは、男の子やねんから将来は結婚して、奥さんと子供を養って行くんやで。男としてしっかりせなあかんで!」そう言って、私は長男を育ててまいりました。男は男らしく、女は女らしく、そう信じてました。こんな言葉の中に、小さい頃から否定的だった二男は、「結婚なんか絶対せえへん!」でした。幼い頃から、長女と長男にくらべ、<少し毛並みの違った子供だなぁ~>と思う子で、最近、性同一性障害MTF(男→女)の診断がおりた所です。
思えば、小学校高学年、修学旅行、スキー学習など宿泊を伴う行事を断固拒否、親である私もなぜそうなるのか全く理解ができず、参加を強要する担任に対し「本人がこんなに嫌がるのだから気持ち良く休ませてやって下さい!」と言うのがやっとでした。担任にしてみれば学校行事を、確たる理由がない者に対しそうかんたんに休ませる訳には行かないのです。当時の千春は、自分の体を他人にみられるのが嫌だったとのこと。。。
中学校に入ってから、小学校時代から「おかま」と言われ続けて来ていたのと、番長のような子からいじめに会い入学5日目まで登校した後、不登校になってしまい、それと前後するように、家庭内暴力、自殺願望、女装が始まり、どこかおかしくなってしまったのではないかと思い、子供を連れ、心療内科などあちこちの病院を巡り歩きましたが、ある心療内科では、「うつ病」と言い、性同一性障害の知識などない医師は、延々と、何種類もの抗うつ剤を処方しました。
その後2年間も続く不登校と引きこもり、中2の夏、思春期外来を受診した時、「性同一性障害ではないか?」との医師の判断から、関西医大ジェンダー外来の受診となったのです。
学校においては、長期の不登校にもかかわらず何のアクションもないまま、中3を目前のある日、私は、学校や不登校生徒の通う適応教室の通学願い出たものの、「性同一性障害の疑いのある者の前例がないので、また、男子生徒が女子の制服で登校するのは、ダメだ」と通学さえ断れてしまいました。ここでも性同一性障害に対する知識のない教師に冷たくあしらわれただけでした。
現在、千春は、女の子として定時制高校に通学していますが、引きこもりが長かったせいか、なかなか学校になじめず、本人も友達にカミングアウトする機会もないまま、今日に至っております。
今でも千春のように、性同一性障害であるがゆえに心と体の違和感で悩み苦しみ、通学できず引きこもっている中高生がいると思います。教育現場での理解が、広がることを願ってやみません。
我が家の場合、子供のカミングアウトはなく、少しづつ女の子に移行して行ったのですが、親の私が、頭の中を整理できずしばらくの間思考が停止してしまったかのようなありさまでした。
幸いにも関西医大ジェンダー外来には患者の会があり、そこを通じて、「ジェンダー中高生交流会」や「つなぐ会」を知り参加することにより当事者や親御さんのいろんな意見が聞けて自分も勉強になり、わかり合える仲間ができ本当に良かったと思います。
性同一性障害に対し心ない言葉を吐く人もいますが、私自身性同一性障害の理解を広めるべく、小さな一歩ながら活動を続けて行きたいと思っています。
そして、悩める子供たちへ。。
「キミは、ひとりぼっちじゃないんだヨ。キミの幸せを祈っている人はキミのそばにいるんだヨ」
YUKARI