(1)ネットワークの充実
たいていの親は自分の子どもの幸せを願い、受け入れ、共に歩み、一番の相談相手になりたいと思うはず。無条件に受け入れねばと思うだろう。しかし、家族自身が、このことに対し無知であったり、突然のことで喪失感、悲嘆、罪悪感にさいなまれることは、ある意味自然だ。また、親族や周囲への説明にも葛藤が伴う。「この気持ちを誰かに聞いてほしい。本人の前では、泣けないが一度大声で泣きたい。そんなところはどこにあるのか。」と探しはじめるだろう。私自身もそうだった。さらに、父親と母親、兄弟の受け止め方は微妙に違う場合もある。そんな場合は家族間の溝にもなってしまう。私は、カミングアウト当初、まず、同じ状況のそれも母親と心を割って話したいと思った。幸い、NHK教育テレビ「ハートをつなごう」の存在を知っていたことから、「家族と友人をつなぐ会」に行き着いたことは、ほんとうにありがたかった。神戸でのこの会に毎回参加させていただく中で、悩みながらも自分なりの日常を淡々と送っている人が大勢いることもわかった。また、残念にも子どもを失ってしまった人たちの中には未来になんとか光を灯したいと活動している方もいる。いずれにしても、ここでは心地よい空気を感じる。「屋久島の森にいるようだ」と思うこともあった。そして何より、出会った「ママ友」に感謝している。
しかし、一方で「つなぐ会」が神戸というのは遠方の者にとって正直厳しい。時間的にも旅費の面でも。私の地元にもこの点がネックになって躊躇している人がいる。今後、裾野を広げるには、このようなネットワークが県内に一つは必要だと思う。確かに、「だれかになんとかしてほしい」で、ことは進まないことは充分承知している。しかし、やはりしっかりした組織と予算措置に行政の手助けをお願いしたいと切に思うところだ。
(2)専門医の充実
いろいろな事情もあると思うが、GIDの精神科医もしくは、そこにつないでくれる医師なりカウンセラーがもっといてほしい。現在の状況では、適切な精神科医などにすぐかかれず鬱状態のまま放置したり、せっぱ詰まって自ら命を落とす人も出てくると思う。ひとり孤独の中で、悩みを抱えたまま漂流している人が実際とても多いのではないだろうか。さらに医療費の保険適用範囲の拡大も必要だと思う。
(3)社会への知識理解を求める活動
すでに始まっている活動もあるが、私の体験から具体的に三点。
- 専門家によるワークショップの充実
早急に行政、福祉、教育面での管理職や、看護、カウンセリングなどに関わる人に対し行ってほしい。専門家に科学的な知識と緊急性を裏付けるデーターなどを示していただくと説得力があると思う。 - 「ハートをつなごう」など良心的な番組の継続的な放送
上記のような番組の普及と同時に、時々視聴率をねらっているとしか思えない不快なものもある。偏見を煽るようなものは規制してほしい。 - 電話相談での適切な対応
「性に関する相談」の中に直接本人が口にしなくてもLGBTのことが隠れていることがあると思う。そこを聞き出して次につなげてほしい。特に中高生に対して。
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