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アメリカ・ウィスコンシン州の親御さんからのメッセージ 2011.5.22 UP

吉永世子・Tom Dean

 

PFLAGのMadison支部から来ました(PFLAGは米国版「つなぐ会」)。Madisonはシカゴの北に位置する湖畔の大学都市です。

 

Fがゲイだと私たちに伝えたのは、18年前、彼が20歳の時でした。以下は、義理の母が語るFのカミングアウト物語です。

 

私とトムが再婚してまもなく、東京にいた時のこと。米国東部で母親と住んでいたFが、長い手紙を寄こしました。11年前に両親が離婚するまでの、楽しかった思い出が綿々と綴られ、その後でカムアウト。

 

トムは衝撃を受けました。ゲイになったのは自分の離婚のせいだ、父親不在が男性を求めさせたと。(後になって、親の離婚と、子がゲイであることの間に因果関係がないことがわかりました)。

 

さて私の方は、新婚早々で、義理の息子のことをよく知らないし、ゲイだと言われても・・・とりあえず、Fに声援を送り続けることにしたものの、トムの離婚に私は無関係だし、Fの実の母親と父親がいるのだから、と一歩引いて傍観していました。

 

それから数年後、米国東部に移った私たちを、西海岸に住むFが訪ねて来ました。職場で知り合った日本の男性、Sとデートしているという喜びの報告でした。Sは、野菜栽培も料理も家の改装も、何でもできる人だそうです。そんな有能な「彼氏」が、常々「もてない」とぼやいていたFを選んでくれたとは・・・ただただSに感謝でいっぱいでした。

 

また数年の月日が流れて、私の職が決まり中西部に移住。大学で親しくなった同僚のTさんがゲイで、家に招待したり、一緒に外食したりするうちに、いろいろ教えてもらいました。後にマディソンに移った時、私たちが「PFLAG」に入会する気になったのも、息子を誇りに思うようになったのも、Tさんとの出会いがあったからです。

 

間もなく、Fは、意中のSとカリフォルニア州で所帯を持ちました。そして一昨年、ほんの短期間でしたが、州が同性カップルの結婚を許可した際、滑り込みセーフで結婚。初デートからもう十数年になりました。

 

さて、二人が結ばれてハッピーエンドとしたいところですが、米国はまた別の心配があります。息子夫婦が住むカリフォルニア州は、多数のゲイが在住し、同性カップルに法的保護があり、他の州に比べてゲイに寛容と言われて来ました。それでもFからは次のような話を聞きます。二人で近くの海岸を散歩する際は、警戒を怠らず、手もつながないし肩も組まない。マンションに戻ってドアを閉めてから必ず、しっかり抱き合うのだと。お互いがあってよかった、無事だったという確認の儀式だそうです。

 

最愛の人と堂々と手もつなげない。身の安全のために友人同士を演じるしかない。トムはこの話を人にする度に、不憫さと心配からでしょう、涙声になります。ゲイであるばかりに、脅されたり、リンチされたりする事件が後を絶たないからです。一方で、迫害や差別が激しければ激しいほど、また抵抗する人も続々と出現する、奇妙な力関係が存在する国、アメリカ。

 

確かに、この30年間、性的マイノリティを支援する人は増えています。Fの母親の勧めで入会したPFLAGでは、家族や友人ばかりでなく、元配偶者や元恋人から隣人まで、年代も様々で、驚くほど多様な人々に出会いました。特に10代、20代の若い世代は、同性愛者に抵抗がなくて、「ゲイ?問題なし」。この世代が成長するまであと十数年。時間はかかっても、確実に時代は変わっていくでしょう。

 

因みに、Fが私に贈った呼び名は「ボーナス・ママ」。思いがけず恵まれた「景品ママ」という意味らしいです。「スペア・ママ」(予備ママ)、「エキストラ・ママ」(臨時追加ママ)でもあるのでしょう。

 

Fは私にとって「ボーナス息子」。当初は傍観者だった私が、支援の輪に加わり、豊かな人間性の友だちができたのは、息子との出会いがきっかけでしたから。人と人が繋がり、支援の輪を幾重にも広げて行く「つなぐ会」。各地で芽を吹いて、たくさんの「ボーナス支援者」が生まれるといいと願っています。

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