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Our Daughters and Sons 2022.3.30 UP
この文章は、アメリカのPFLAG(LGBTの親や友人の会)が発行している小冊子を日本語に訳したものです。
    Our Daughters and Sonsはページを分割しています。次に各ページの目次を掲載します。

    日本語訳 川合知子、わくちん、みて公

 

我が子がゲイ、レズビアン、バイセクシュアルであると初めて知ったとき、一体どうすれば?

多くの親達は我が子から「お母さん、お父さん、僕は(私は)ゲイなの。」と告白されれば戸惑い、きっと最初に「一体どうすればよいのだろう?」と思うでしょう。

Parents, Families and Friends of Lesbian and Gays (PFLAG (レズビアン・ゲイの親、家族、友人の会))が存在する理由はそこなのです。この小冊子があなた自身の子どものセクシュアリティーとその意味を理解する手助けとなり、今後の親子関係の継続に意味のあるものとなればと思います。私達も今貴方が感じているものと同じ気持ちを感じていたのです。だから分るのです。

あなたは決して1人ではないのです。ある統計によればわが国でもそして世界中でも10人に1人が同性愛者であると言われています。これは、4家族に1つの家族メンバーの中、もしくは直系でなくとも親族の中に少なくとも1人はゲイ、レズビアン又はバイセクシャルの人がいるという事なのです。

つまり、たくさんの人たちがあなたと 同じような思いを持っており、話し合える仲間は多くいるのだという事を知ってください。その思いを語り合う事がいかに大切であるかという事は私達が身をもって経験し、それは非常に重要な助けとなるのです。方法は本であったり、電話での相談ホットラインであったり、関連するウェブサイトあったりとさまざまですが、互いの経験、思いを分かち合う事がより深い理解と未来への一歩を踏み出す勇気となるのです。PFLAGを通じてあなたが今必要としている情報、サポートサービスを得ることが出来るのです。

次に大切な事、それはあなたが望むのであれば、この度の経験はあなたの子ども達とより強く、より深い関係を築く礎となるのです。簡単ではありませんが、私達経験者の多くはこの事実を実感しているのです。

中にはこの状況をなんなく乗り越えられる親もいます。しかし多くの親達はこの状況を、ショック、否定、怒り、罪の意識、喪失感などの伴う深い苦しみと共に乗り越えてきました。つまりあなたが今こういった思いをかかえているとしても不思議な事ではないのです。それは私達の暮らす社会自体がゲイ、レズビアンそしてバイセクシャルに対して持つ態度そのものなのですから。

今感じている気持ちを否定する必要はないのです。 我が子を愛しているのだから、子どものため、自分自身の為にも彼らのその気持ちを受け入れ、理解し、支援していきましょう。

たとえ我が子を失ったような思いを持ってしまったとしても、現実にはそうではないのです。あなたの子どもは昨日と何ら変わらぬあなたにとっての宝なのです。 あなたが失ったもの、それはあなた自身が抱いていた我が子のイメージにすぎません。この喪失感はとても厄介ですが、あなたが新たに培ってゆく正しい理解によって必ず埋まるものなのですよ。

青春期の子どもの場合状況はさらに困難であると言えるでしょう。親から拒絶された状況におかれた若 いゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの人達は自殺、薬物依存、アルコール依存などを引き起こすケースが数多く見られます。中には親と距離をとることで自分自身を守ろうとする場合もあるでしょう。

もしもあなたの息子、娘が彼ら自身の決断であなたに「カムアウト」したのであれば、ゴールまであと半分なのです。あなたの子どもは社会的軋轢の中、多大なる勇気を持ってあなたに対し、心を開き素直であろうとしているのですから。逆に言えばそれはあなたへの愛情、信頼の証なのです。

今こそ、そんなあなたの子どもの勇気、あなたへのかかわり、信頼、その愛に答える時なのですよ。

 

我が子はもう以前の我が子ではないの?

生まれた頃から日々その成長を見守ってきた我が子ですから、私達親は彼らの事をなんでも知っており、理解していると思いがちです。

そんな時、「ぼくは(わたしは)ゲイなの。」と言われてしまったら、急に我が子が分らなくなってしまうか、時にはそうかも知れないと思いつつも親が親自身の中でその事実を認めない場合が多くあります。告白されるとたいていショックと喪失感を感じるでしょう。

子どもに託す夢、将来への期待など勿論誰もがもっているものですが、その夢はあなた自身の体験、生まれ育ってきた環境、文化の歴史から生まれたものなのです。こんなにも多くの同性愛者が存在する事実があるにも関わらず、いまだアメリカ社会においても親というものは子どもが異性愛者であるという固定観念にしばられています。

あなたの今感じているショックや喪失感といったものは全く自然な苦しみの過程であるといえます。子どもに託した夢の喪失、それはあなた自身が作り上げた我が子のイメージ、我が子の事はなんでも分るのだという自負の喪失に他ならないからです。

考えてみれば、それは異性愛者の子どもにしても、同性愛者の子どもにしてもの当然の出来事といえます。子どもは常に親を驚かせてくれます。例えば、親の望むような相手と結婚しなかったり、親が良かれと思う職を選ばなかったり。彼らは彼ら自身で選ぶ人生を生きてゆくのですから。つまり、私達が生きるこの社会において、親は我が子が大勢ではない性的指向を持つかも知れないという状況を想定しておく必要もあるわけです。

何があろうと、変わらない事実は我が子が我が子であるということ。あなたの子どもはあなたがその性的指向を知る以前と何ら変わりない大切な我が子なのです。変わる物があるとすれば、それは愛する我が子を本当に知る事、理解する事によって変化するあなた自身の夢、期待、幻想なのです。

 

なぜ話してくれたの?

親の中には我が子の性的指向を知らない方が幸せだったと感じる人もいるかもしれません。

親たちはこの頃を振り返って、その当時見落としてしまっていた子どもとの距離に気づくのです。時に私達は実際に起こってしまった事を否定してしまいます。例をあげてみると、子どもからの告白を拒絶してしまうと「今はきっとそういう時期なのだろう、きっとそのうち元に戻るだろう」となりますし、心を閉ざしてしまう場合は「聞きたくない!」となります、また事実を受け入れようとしない場合は「分った、分った、そろそろ食事にしようか?」と言った受け答えとなるわけです。これらはすべて自然な反応なのです。

しかし、我が子の性的指向を知らない、理解しないという事は我が子を知らず、理解していないという事であり、その場合、その子の生活、人生の過半数は未知のものとなり、あなたが決してその子というものを知る事がないという事実なのです。

我が子の性的指向を理解し、受け入れる事が重要なのは同性愛や両性愛が決して成長過程における一時的なものではないからなのです。

確かに自分の性的指向を模索するといったケースもありますが、親に自分が同性愛者であるという事実を告白する時子ども達は既にその段階を越えている場合がほとんどでしょう。通常、性的マイノリティの指向を持つ子ども達は自身の性的指向を理解し、認めるにあたって長い長い時間悩み、考えるのですから。

ですから、もしあなたが彼らに告白を受け、「本当にそうなのだろうか?」と思っているのであれば、答えはおおむねYESでしょう。子どもは親に自分自身が同性愛者であると告げるには、事前に否定的な固定観念だとか理解されなかった時の恐怖などありとあらゆる危険な状況を想定し、それを乗り越えて決断したのです。

あなたへの告白はつまり息子、娘からあなたへ送られる愛であり、あなたからの理解、サポートを受けたいというメッセージなのです。それには多大なる勇気が必要だったのです。それは、あなたに素直に、正直に心を開き、ありのままの自分自身を理解してほしい、愛してほしい、そしてより良い 関係を築いていきたいという思いの現れなのです。

 

なぜもっと早く話してくれなかったのか?

我が子が長い間悩んできたことに気づいてやれなかった事実を知る事は非常に辛い事かもしれません。話してくれなかった、それは自分を信頼していなかったからなのではないか、自分の愛情が足りなかったせいではないのかと感じてしまう事もあるでしょう。何でも分っていると思っていた我が子の事を理解出来ずにいた事、彼ら自身の人生から締め出されてしまっていたという現実と向き合う時心が痛むでしょう。

しかし、これもまた異性愛者、同性愛者どちらの子どもを持っていたとしても親が感じる事の一つであるといえます。子どもが大人になる時、親子の間には距離が必要となる時期があります。あなたへ相談を全くせず、自らの道を進む子どもも中にはいるでしょう。

しかも、こういった場合さらに状況はより深刻です。子ども達が親にカムアウトする事を決める時、それは大抵予測もしないところでいきなりやってくるものだからです。

同性愛者達は往々にして彼らがそうであるという事実を親から隠そうとしがちです。それは彼ら自身がその事実と向き合うため、自分自身を理解する為に長い時間が必要だからなのです。ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの若者達というのは大抵早い時期から自分の「違い」を感じており、それが一体何であるかを分るまでに何年もかかる場合もあるのです。

それは私達の生きているこの社会が同性愛に対して間違った認識を持っており、同性愛者達が怖いものであるという認識をもっている為でもあります。そのため、しばし同性愛者達は自らの性的指向について自分の内面で自己否定や不安感と戦っているのです。ですから中には当然親にその事実を打ち明けられるようになるまで随分と時間が必要な場合もあるのです。親心としては、何でも話して欲しかったと思うかも知れませ んが、忘れてはならない事実として、この現実社会の同性愛への扱いとは「聞かず、語らず」であるというところです。

ですから、親として我 が子の辛い時期に助けとなれなかった事を悔やむよりも、もっと早く話してくれていれば結果は違うものであったかもしれないと考えるよりも、彼らが早い時期 においてそういった行動に出られなかったという事を認識してください。一番大切なこと、それは今我が子が心を開いてくれたのだという事実なのですから。

 

なぜ我が子が同性愛者に?

これは多くの同性愛者の子どもを持つ親が抱える疑問の一つです。その理由はさまざまですが、例をあげるとそれは自分が抱いていた我が子という理想像が崩れることの悲しみからくる疑問であったり、育ててきた過程において自分が何かを間違えてしまったのではないかという思いからであったりもします。我が子の周りにいる何者かが我が子を同性愛の道へ引き込んだのではないか?と疑う事もあるでしょうし、中には生物学的に何かしらの理由を求める場合もあります。

初めて我が子が同性愛者であるという事実に直面したとき、ショック、否定や怒りなどをあらわにする親たちもいます。一つの例としては「何てことをしてくれたんだ!」という思いです。これらは当然冷静な反応であるとはいえませんが、人間というものはショックに対して往々にこういった反応を示してしまうものです。私達はこの反応を嘆きの過程であると考えます。この段階において親は自らの持っていた我が子の理想像が崩れ去る事を嘆いているのです。ですが、この思いとしばらく対峙する事によって見えてくるのは、我が子がした事、それはただ純粋に親を信じ、自分自身を親に知ってもらおうという行動であったのだということです。

他の誰かが我が子を同性愛の道へ引き込んだのだと思う親もあるかもしれませんし、同性愛者が異性愛者を同性愛へ誘い込むというのはよくある誤解ですが、決して誰かがあなたの子どもを同性愛者に仕立て上げたわけではなく、それは彼ら自身が一番良く分っているでしょう。誰も誰かを同性愛者に変えるなどという事は出来ないのです。

中には自分達のしつけに問題があった為、子どもが同性愛者となってしまったと思う親もあるでしょう。心理学や精神医学の分野では親の性格が子どもの同性愛指向の原因である場合があるいう理論がとなえられていた事もありました。支配的な女性や、権威の薄い男性、同性のロールモデルの不在がその原因であるなどといったものです。しかし、こういった仮説はどれも現代の心理学、精神医学の分野では認められておらず、一般社会からこういった神話や誤解を拭い去る事というのも我々PFLAGの主な活動の一部なのです。

同性愛者は特別な家庭環境で育ったからそうなるものではありません。中には支配的な母親の下に育った子どももあるでしょうし、逆に支配的な父親の下で育った場合もあります。ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの人達はいずれの場合も一人っ子である場合、末っ子である場合、真中の子である場合、また長男、長女である場合とさまざまです。家族の中に同性愛者がいる場合もあるでしょうし、全くいない場合もあります。その多くは世間でいう「一般家庭」の出身者達なのです。

遺伝的、生物学的な何かが原因で同性愛者となると考える親もいます。同性愛と遺伝学に関する研究もなされてはいますが、同性愛の「原因」について決定的な発見はいまだありません。きちんとしたデータはありません。しかしなぜその原因を知る事がそんなに重要であるのかということをまずは自分に尋ねてみませんか。

原因の追求や解明が親の子に対する愛を左右するものなのでしょうか。異性愛者達にも同性愛者と同様にその指向の正当性が求められるのでしょうか。ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの人たちはあらゆる宗教、国籍、人種的背景をもっているのです。つまり全ての同性愛者は異性愛者と何ら変わりはないという事であり、性というのは多様なものであるのです。興味深いことではあるかもしれませんが、あなたが子どもを愛すのになぜ同性愛者であるかの理由を知るのは実のところそう重要な問題ではないのです。

 

どうして我が子の性的指向を理解できなのでしょう?

その不安は文化のもたらすものであるといえます。同性愛嫌悪は私たちの社会において簡単に意識の中から消し去れないほど定着してしまっている考えです。同性愛嫌悪が存在する限り同性愛者とその親たちは深刻な恐れと懸念に苛まれます。

リベラルであると自負しており、さまざまな差別意識も乗り越え同性愛者の友人がいるような親の場合は、理解出来ない不安、不快感を感じてしまいそれが良心の呵責となるケースもあります。そんな親たちは「我が子」が同性愛者であるという事実に不満を感じて、初めてその事実(自分が不満を感じていること)に驚くのです。社会から植え付けられた固定観念に打ち勝つだけではなく、こういった親の場合はさらに「そんな風に感じるべきではないのだ。」という思いに悩んでしまいます。

この場合大切なのは、まず我が子にとって今何が一番大切であり必要なのかを考える事に専念することであり、それが救いとなります。出来る限りこういった罪の意識にとらわれすぎないようにしてください。それは根拠のない事であり、あなたにとっても、子どもにとっても何も得る事にはならないのですから。

 

心理学者や精神科医に相談するべき?

子どもの性的指向を変える事を期待してセラピストに相談するという事は無意味なことです。同性愛というのは病気ではなく、「治癒」すると考えるべきものではないからです。これは自然なことなのです。

ただし、同様の経験をもつ家族の事や性的指向に関して経験豊富な人物に相談するのは良い事であるといえます。親であるあなた自身が抱えている不安や思いを 誰かに話す事はとても大切なことですから。カムアウト後の親子間のコミュニケーションの手助けが必要な場合もあるでしょうし、子ども自身の精神的安定の為 にそういった時間が必要とあなたが感じる場合もそうです。

 

「同性愛を治すセラピー」があると聞きました―それって役に立つの?

もし、あなたの子どもが同性愛者でも、同性愛は「選ぶ」ものではないのですから、「我が子の考え方を変える」などできません。いわゆる「同性愛を治すセラピー」でそれが可能とされていても、です。実際、「同性愛を治すセラピー」は多くの医学、専門家の団体から否定されており、むしろそれは、深刻な傷を残し、自殺にまで追い込んでしまうことがあることが明らかにされました。

  • 1990年、アメリカ精神医学会は、「同性愛を治すセラピー」には効果がなく、むしろ害悪のほうが大きいという科学的根拠を示しました。
  • 1997年、アメリカ精神医学会は「同性愛を治すセラピー」をしないよう、公的に警告を出しました。
  • 1998年、アメリカ精神医学会は「同性愛を治すセラピー」に反対する次のような宣言をしました。「精神医学的な研究では、性的指向を変更しようとしても意味がないことが証明されています。しかし、(同性愛・両性愛者の抱える)潜在的なリスクは大きく、鬱病、不安神経症、自己破壊的行動(自殺)などの行動がみうけられます。」
  • アメリカ医師会は、その学会規約の中で(番号H-160.991)「同性愛を精神障害とみなす考えや、患者の同性愛指向を変更すべきという考えに基づく『同性愛を治すセラピー』の使用に反対する」と明言しています。
  • 2001年には、アメリカ専門外科医がおこなった「セクシュアルヘルスと責任ある性的行動キャンペーン」では、同性愛は「元に戻せる人生の選択」ではないと同性愛を擁護しています。

PFLAGにいるたくさんの親たちは、こうした「同性愛を治すセラピー」が我が子にとってどれほどの大きなダメージを残すのかを、直接目にしてきました。PFLAGの会員は、「同性愛を治すセラピー」のようなイデオロギー的で疑似科学に基づくような信条に依拠するのではなく、科学的根拠や信頼できる専門家の意見にもとづいて社会を啓蒙し教育することが大切であると信じています。

重要なのは、これらのグループが何者で、かれらがいろいろな名前を使って活動しているのを知ることです。17頁に避けるべきグループをリストアップしました。

 

周りから白い目で見られたり、仕事をみつけたり続けたりするのが難しいのでは、誰かから暴力を受けたりするのでは・・・そんなことがうちの子におきるんじゃないでしょうか?

こういったことはありえることですが、息子さんや娘さんが住んでいる場所や就いている職業によるところが大きいのです。また、同性愛に対する人々の態度も変わり始めており、そうした態度は今、比較的急速に変わっています。あなたのお子さんが差別から比較的解放された状態で、生活したり働いたり出来る場所は、数多く存在しています。

しかし、残念なことに社会の変化は往々にして遅々でもあります。(それは、この国で女性が選挙権を得るのにどれほどの時間がかかったかを見れば明らかです。)そして、前進しようとすれば、多くの場合バックラッシュ(反動)が起こるものです。いまよりもたくさんの人々、団体が同性愛者の権利を擁護し、同性愛嫌悪がわたしたちの社会からなくならない限り、あなたの子どもはいくつかの重大な問題に直面せざるをえません。

 

我が子が同性愛者であることと、自分の信じる宗教と、どう折り合いをつけたらよいでしょうか?

宗教のなかには同性愛を否定するものがあるのは事実です。しかし、こうした宗教のなかにおいても、教会が同性愛者を非難するのは不合理である、と考えている信頼できる指導者がいます。

1997年、全米カトリック司教会は、親たちに対して、同性愛者の子どもを愛し、援助するように促す司教宣言をしました。1994年の司教教書に、全米司教会は次のように書いています「異性愛の人にとってそうであるように、同性愛者にとってのゆるぎない愛は、神の御霊によるものである」。

アメリカにおける主流の宗教のほとんどが、いまや、同性愛者の権利を擁護する立場を公式にとっています。さらに一歩先をゆく宗教もあります。たとえば、メソジスト教会は、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルを受け入れる信徒団のネットワークを発展させてきました。1991年から、統一キリスト教会は、性的指向によって聖職に就くのがはばまれるようなことはあってはならないとする宗派の方針を掲げています。米国聖公会では、宗派内の法規組織が、同性愛者は教会内の他の信徒と全く同じ権利をもっていると宣言しており、オープンな同性愛者を司教に任命しています。
 

HIV/AIDSはどうなんですか?

AIDSの広まりが当初最も顕著だったのは、同性愛者・両性愛者の男性、そして注射器を使いまわす麻薬使用者でした。しかし、今は、どこのどんな人でもAIDSの脅威にさらされています。

そのため、親のみなさんにはHIV/AIDSについて関心を持っていただきたいのです。我が子が同性愛者であるか、異性愛者であるかに関わらず、全ての親に。お子さんがきちんとAIDSの感染経路や予防法を理解しているか、そこをはっきりさせていただきたいのです。

10代の性行動はより低年齢から活発になっており、AIDSの感染がいまだに拡大している状況です。ですから、親はAIDSの危険から目を背けたり、「うちの子に限ってそんなことはない」と思ったりすることはできないのです。

もし、お子さんが現在HIV陽性だったり、AIDSだったりした場合、お子さんは親の手助けを、今最も必要としています。そして、知っていただきたいのは、「あなたは独りじゃない」ということ。医学的、心理的、身体的治療において、手助けをしてくれる地域的・全国的機関は非常に多く存在しているからです。

PFLAGは、あなたと同じような状況にいる他のご家族を紹介できますし、あなたのニーズにあった情報も提供できます。お探しの方は、PFLAG本部へお電話いただくか、ウェブサイトに掲載されている最寄りの連絡先を見つけてください。ここまでくれば、お子さんとの関係がより良くなることでしょう。ですが、それと同時に、ご家族が学ばなければならないのは、お子さんの健康が変化することによる、身体の状況・心の状況にどう対応していくか、ということです。

 

我が子に関係するような法的な事件はありますか?

2003年の「ローレンス対テキサス」事件において、最高裁判所はソドミー(同性愛性行為の法律上の専門用語)を罰するのは憲法違反であるとの決定を下しました。さらに、多くの市、街、州などの地方自治体で、同性愛行為を犯罪とみなさない方向へと動きがみられます。なかには、地方条例や法律を設けて、差別禁止のための独自の対策をとっている裁判所もあります。

しかし、いまだにゲイ、レズビアン、バイセクシュアルを否定する法律を保っている州もあります。こうした法律が施行されることはまれですが、こうしたケースにおちいった場合に手助けをしてくれる団体や組織は多く存在しています。(より詳細な情報や疑問をもった場合にコンタクト出来る人材の候補を知りたければ、この小冊子の後半部分にある「資料」をご覧ください)

 

状況はわかりました。でも、なぜそれを見せびらかさないとならないの?

自分が同性愛者であると「カムアウト」したり、公の場で同性パートナーへの愛を表現したり、同性愛者とわかるシンボルやTシャツを身につけたり、ゲイプライドパレードに参加したりする…そうした同性愛者や両性愛者は、自分の性的指向を他人に「見せびらかす」行動をしていると非難されることがあります。

全ての人が異性愛者であることがいまだに当然視される世界では、「カミングアウト」はゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの人達が自分の性的指向を知ってもらう唯一の方法なのです。「カミングアウト」は、社会のなかで同性愛が不可視化されるのを避けるポジティブな方法であると、たいていの場合は考えられています。なぜなら、同性愛者がいないとみなされる社会では、自己嫌悪が内面化されたり、自尊心が欠如したりすることもあるからです。

もしお子さんが公衆の面前で同性パートナーへの愛情を表現していたら、あなたは親として、不快な思いをされるかもしれません。

しかし、これは強く心にとどめておいてください。異性愛者、同性愛者に関わらず全てのカップルは公の場で愛情を表現します。それは、パートナーに愛や感謝を感じているからに他なりません。

ちょっと考えてみてください。異性愛者たちが公の場で愛情を表現するのも同じように嫌ですか?

以上2つの例(「カミングアウト」と公の場での愛情表現)において、性的指向を「見せびらかす」のは、ただリラックスした自然な方法で公に振舞いたいというだけのことかもしれません。

これ以外の状況、たとえばTシャツを着たり、公のイベントに参加したりすることで自分のセクシュアリティを強く主張するのは、政治的な決心といえるかもしれません。同性愛の存在を無視したり、笑いものにしたりする文化の中では、自分のセクシュアリティを公に強く主張することは、自己を肯定するための重要な行動ともなるのです。

お子さんが同性愛者だとわかるような行動をとることに対し、親としては、周りから返ってくるだろう否定的な反応が心配なのだとしたら、次のことを心に留めておいてください。同性愛者や両性愛者の中には、そういう恐怖がわかっているからこそ、自分の行動に目を光らせている人もいるのです。ただ、なにをどうするのかを決めるのはお子さん自身の判断に委ねられています。

 

我が子は自分の家族をもてるのでしょうか?

世界中で同性カップルが永続的な家族単位を形成・構築しています。そして、多くの同性カップルが式を挙げて、お互いのパートナーへの献身を祝い、二人の関係を友達や家族と分かち合っています。2006年現在、同性婚はマサチューセッツ州で法的に認められており、バーモント州やコネチカット州では州法の下で、(同性間の)シビルユニオン制度を定めています。これは、婚姻と類似した権利を提供する関係性を、(同性間カップルに)つくる制度です。

他の国に目を向けると、同性婚が法律で認められているのは、スペイン、ノルウェー、オランダ、南アフリカ、カナダです。また、多くの国が同性カップルにも、権利と(もしくは)シビルユニオン制度を提供しています。そして、IBMやアメリカン・エキスプレスのように、同性カップルを他の婚姻カップルと同じように取り扱い、同性愛者・両性愛者社員のパートナーに医療保険を適用する企業も増えています。

多くの同性カップルは、ともに子どもを育てています。子どもをもうける為に人工授精を利用するカップルもあれば、過去の異性愛関係でもうけた連れ子を一人で育てたり、新しいパートナーと一緒に育てたりするゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの人達もいます。社会の態度も変わり続けており、同性愛者カップルによる養子縁組も広まりつつあります。

 

家族や友達にはどう伝えたらいいの?

「カミングアウト」が同性愛者にとって困難であるように、その親にとってもカムアウトのプロセスは同じく困難です。多くの親は自分の子どもが同性愛者だと知った瞬間から、クローゼゼット状態となり、そのことを隠そうとします。自分の子どもの性的指向を受け入れようと奮闘すると同時に、多くの場合、他の人に知られるのを心配します。「息子さん、彼女は出来た?」「お嬢さんはいつご結婚なさるの?」そういった質問を上手くかわさなければならなくなるのです。

私たちPFLAGのメンバーは、親は現実よりも悪いことばかり考えてしまいがちだということに気づきました。自分の両親(つまり自分の子どもにとっては祖父母)に伝えることを何年もためらっていたものの、結果的には「そんなの前から知っていたよ」という答えが返ってきたという人もいます。

私たちが出来るアドバイスは、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルに対してするのと同じです。医学、精神医学、宗教、職業、政治にかかわる様々な団体のなかで、同性愛に対する態度が変化していることを、もっと知ってください。同性愛者のための平等の権利を守るための味方として引き合いに出せる「権威者」はたくさんいるのです。

(原文の小冊子の)14ページに、この世界に長きに渡り貢献をしてきたゲイ、レズビアン、バイセクシュアルの有名人が(一部ですが)、リストアップされています。多くの同性愛者が自分の性的指向を隠しているのですから、あなたが引き合いに出せる名前は、ほんの一部だというのを忘れないでください。しかし、それ(同性愛者である人物を一部でも知っているということ)は、もしかしたら、あなたは多くの同性愛者を既に知っているかもしれないということを意味するのかもしれません。

人前での発表や就職面接、自己主張能力の向上など、とにかくあなたに恐怖や緊張をもたらす新しい出来事のための練習をするように、(あなたのカムアウトの際に)何を伝えるのか練習をしてください。

ある親はこう言っています。「私はよく、洗面所に入ってドアを閉め、鏡に向かって『私の娘はレズビアンなの』と誇りを持って言う練習をしていました。」その練習は実際役に立ちました。だから、練習は本当に大事です。」

あなたの不安をわかってくれる人に話をしてください。PFLAGメンバーは、自分の経験をあなたと話し合うことで、お役に立てるかもしれません。PFLAG本部か、地元のPFLAGリーダーにコンタクトをとって、全米と海外あわせて500を超える支部のネットワークから多くを学んでください。この小冊子の後ろに、連絡先が掲載されています。

もしかしたら、親類や友人、同僚からネガティブな、そうではなくても、無神経な言葉が返ってくるかもしれません。しかし、おそらくそういったコメントは、心配なさっているほど多くはないことがわかることでしょう。

あなたのお子さんはもうすでに、この道を歩き始めている先輩です。きっとあなたの助けになることでしょう。

ただ、誰に我が子のセクシュアリティを伝えるか、というのは、当事者であるお子さんと話し合い、ともに結論に達した上で決めてください。

 

やっぱり気になる、近所の目

近所の反応――これはかなり現実的な心配でしょう。とくに、閉鎖的な地域社会の一員であると感じている家族や、原理主義色の強い宗教が主流の地域に住んでいる家族は、なおさらのことです。

しかし、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアルは、地球のあらゆる所におり、あらゆる文化・宗教・民族集団、職業にわたり存在しています。

ある親は、こう言っています。「私はオクラホマ州のトゥルサで、レズビアンの娘を持つ唯一の母親だと思っていました。しかし、娘のことについて思い切って話を始めると、他の親たちが私の前に現れるようになったのです。そして今では、誰かが私のところへ来て『あなたに話したいことがあるんです』という度に、その人が何を話したいのかわかるようになりました。」

誰かに話すことで、受け入れがたい反応に直面してしまうこともあるかもしれません。しかし、「私だけだと思っていました」という反応を、PFLAGのメンバーが受け取ることも珍しいことではありませんでした。
 

どうやって、子どもを支えていけばいい?

あなたは親として、自分だけではなく我が子の面倒もみなくてはなりません。

PFLAGが存在する理由はここにあります。あなたがよりよい親になれるよう、個人個人の要望にお答えできるよう手助けをしています。

この小冊子を読むことが、我が子をサポートする第一歩となっているのです。というのも、(この小冊子を読んでいるということは)あなたが新しい情報を受け入れる偏見のない心を持ち、もっとよく知りたいと望んでいる証なのですから。

同性愛者・両性愛者の我が子をサポートする――それは、親としての一般的なサポートの延長線上にあります。我が子と話したり、我が子の話を聞いたり、我が子とともに学んだりすることです。

子どもによって、両親から必要としているものは異なります。我が子がセクシュアリティに関して必要としているもの、セクシュアリティにからんで抱いている問題について、その子とどうコミュニケーションをとるかは、親であるあなた次第なのです。

ある親は、自分自身の人生経験との共通点や相違点を認めることで子どもをより理解し支援できているといいます。あなた自身が、人生の中で経験した悲しい出来事をどう解決したかを話すことが、役に立つときもあります。

しかし、性的指向に基づく差別は、他とは違った形で人を傷つけることをわかったうえでコミュニケーションをとらなければいけない場合もあります。

親であるあなたが同性愛について出来る限り徹底的に学び、その知識を私たちの住む社会に広めることを手助けしてくれることが、あなたの子を支援することに繋がっていきます。ずっと隠しているからこそ、偏見や差別が存在し続けるのです。

 

子どもからのカムアウト・・・新しく知った事実とうまく付き合っていけるでしょうか?

ある精神科医はこの質問にこう答えています。「たいていの親御さんが、『自分の子どもの性的指向が現実であることを受け入れられるようになると、全く新しい世界が開けてきた感じがする』とおっしゃいます」と。

まず、親は今まで全く知らなかった我が子の一面に慣れていきます。それはもう、親は子どもの人生に含まれている、ということなのです。その結果、たいていは、親子の関係がより良くなります。そして、そのような親はゲイコミュニティに出会い、ゲイコミュニティにいる人たちは他のコミュニティにいる人たちと何ら変わりのない人々であるのを理解するのです。

冒頭の質問に、何人かの親にも答えていただきましょう。

「我が子のセクシュアリティについて話し、あなたは独りではないことを知るのが、本当に大切です。この経験をしているひとが他にもいて、前向きにその事実を捉えている人もいることを知ってください。そして、これを機会にお子さんといい関係を築けるという特典もあるのです。親は、やっぱり親でいたいんです。一般的に言って、親と言うのは、我が子との縁が切れたくはありませんから。」(レズビアンの娘を持つある母親)

「『ゲイリーは元気にしてる?』と聞かれるたび、心の中でこう思っていました。『息子は元気、私の方が元気じゃないわよ』と。でも、あるところまでたどり着くと、そこから後は簡単でした。息子の友達に会うことで、かれらは素晴らしい人々で、息子がとても素晴らしいコミュニティにいるんだ、ということがわかりました。そして、『同性愛者であることの何が問題なの?問題なのは社会の方でしょ。」そう思ったとき、わたしたちは山を乗り越えたんだなと気づきました。」(ゲイの息子を持つある母親)

「私は3ヶ月の間、泣いては泣き止み、そしてまた泣き・・・その繰り返しでした。でも親子関係は常にとてもいい状態でした。それは決して変わりませんでした。(息子が同性愛者だとわかってからも)わたしたちの息子への愛は疑いようもなく、息子にもすぐに『お父さんもお母さんもあなたを愛しているのよ』と自信を持って告げました。そのときから、息子と私たちの関係は強くなりました。だって息子がこの社会で直面しているものを知っているんだ、という強い絆がありますから。」(ゲイの息子を持つある母親)

「私の場合、性的指向に関する本を読んだり、情報を知ったりすることがとても役に立ちました。自分が今まで見聞きしてきた根拠のない神話を葬り去ることができたんです。だから、たくさんの情報を知れば知るほど、より怒りを感じるようになり、息子に代わって社会を変えたいとより強く思うようになりました。」(ゲイの息子を持つある母親)

「自分にとってターニングポイントだったなと思うのは、同性愛に関する書物の中で、自分のセクシュアリティをきちんと受け入れられている子どもはたいてい、より心穏やかで、より幸せを感じ、より自分に自信を持っている、と読んだときだと思います。そして、もちろん自分の子どもにもそうあってほしいと思いましたし、私がその邪魔をするようなことをしたくはないと思いました。」(ゲイの息子を持つある父親)

「私の場合のターニングポイントは、息子が私に『父さん、僕は前の僕と同じだよ』と言われたときだと思います。もうそれから半年経ちますが、いま一層強く実感するのは、彼の人生において変わってしまったものは本当に何もないということです。おそらく変わったのは、彼をみるわれわれの目なんだと思います。」(ゲイの息子を持つある父親)

「あなたに伝えておかなければならないと思うのは、良いことがたくさんあるっていうことです。このこと(同性愛者として生きる人生)を親であるあなたと分かち合いたいと願い、あなたにも人生の一部となって欲しいと願っている素晴らしい子どもが自分にはいるのだ、とあなたは気づき始めているでしょう。あなたの両手に託された、お子さんからの信頼を見てください。それをあなたに渡すために、お子さんがどれほどの勇気を必要としたのかを考えてみてください。」(レズビアンの娘を持つある父親)

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